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船越ワイナリー
尾崎由衣さん

船越ワイナリー 尾崎 由衣さん 東京都福生市出身。大学時代に海外へ滞在し改めて日本の農業や食に興味を持つ。
大学を卒業して数年後、JSA認定のソムリエ資格を取得。ワインを深く知ることで、自分でも造りたい気持ちが湧き上がる。
共通の知人の紹介がきっかけで、船越ワイナリーで働く為2021年4月に多古町に移住。

マダカスカル渡航が日本の食を改めて考えるきっかけに

なぜ、ソムリエの仕事を選んだのですか?

社会人になるまで、ワインにはあまり興味がなくて。大学時代は、どちらかというと海洋汚染や大気汚染などの環境問題に興味があり、専攻 としては熱帯、乾燥地帯の農業や国際協力について勉強していました。また、在学中、アフリカのマダカスカルに2か月間滞在した際、お世話になったNGOが活動していた村で、希少な動植物の保全活動や村人たちの生活に触れる機会を得ました。そのときの経験が、自分自身が生まれ育った日本のこと、特に農業や食について改めて考えることに繋がっていると思います。大学を卒業後、国産の自然食品を扱う会社に勤めたのち、有機野菜とオーガニックワインを取り扱う飲食店に就職し、JSA(日本ソムリエ協会)認定のソムリエ資格を2013年に取得しました。その後、参加したナチュラルワインのイベントで、フランスの生産者が造ったワインのあまりの美味しさに感動して涙がでたんです。「いつか私もワインを造りたい」という気持ちが湧き出てきて、数年後、そのワインが造られる畑を訪れるため、収穫の時期に合わせてフランスへ行きました。

「世界に誇れるワイン」を一緒に造りたい

どうして多古町で働こうと思ったのですか?

フランスから帰国後、すぐにでもワイナリーで働きたかったのですが、醸造や栽培の経験もなかったので難しく、ワインの輸入会社や飲食店で働いていました。そんななか、新型コロナの影響で働いていた飲食店が閉店をすることになってしまって…。これからどうしようかと迷っていると知り合いから、千葉県多古町にある“船越ワイナリー”がスタッフ募集をしていると教えてもらったんです。すぐに連絡を取ってみると「ぜひ働いて欲しい」という嬉しいお返事をいただきました。長年、ワイン造りに携わりたいと思っていましたが、すでに新しい仕事を始めていたことと、東京を離れて知り合いのいない土地で暮らすことを考えると不安でした。そして、ワイン造りの経験がない私がいきなり醸造を担当しても大丈夫なのかと悩みました。でも、“船越ワイナリー”のワインを飲んでみたらすごく美味しかったんです。これが“船越ワイナリー”で働こうと思った一番の理由です。社長の思いである「世界に誇れるワインを造る」ことが、ここでなら出来るかもしれないと思い、多古町に就職・移住を決意しました。

尾崎由衣さん尾崎由衣さん

ストレスフリーな多古町。多古と東京は意外に近いと思います

移住をしてよかったことは何でしたか?

移住をした当初は、東京での仕事も続けていたので、東京と多古町で二拠点生活をしていました。週の半分ほどは東京、もう半分は多古町といった感じです。東京で働いていた時も電車での移動が多かったので、多古町までの約2時間の移動もそれほど苦ではありませんでしたが、“船越ワイナリー”の皆さんのご協力やワインに対する熱量から軸足を多古町に置くこととなりました。今では、多古町ライフを満喫していますが、月に何回かは東京にも行き、『多古ときどき東京』で暮らしています。

移住をしてみて良かったことは、空が広くて晴れた日には綺麗な夕焼けを見ながら家に帰れることと、満員電車に乗らなくて良いことです(笑) 空気や水も美味しく、採りたての新鮮な野菜をおすそ分けいただくことも多く、都会では味わえない生活を送っています。

手探りのワイン造り。力仕事も頑張っています!

苦労していることは何ですか?

一番は、ワイン造りの経験がないことですね。栽培も醸造も多くの方にアドバイスを頂きながら進めています。醸造に関しては、長野県の経験豊富な醸造家の方に“船越ワイナリー”顧問としてご指導いただいています。また、 “船越ワイナリー”では将来、多古町産のぶどうを育ててワインを造ろうとしています。千葉県は、ワイン生産が盛んな長野県や山梨県などの地域に比べて高温多湿な気候なので、ワイン用のぶどう栽培には難しいことがたくさんありますが、農薬に頼らない栽培方法で奮闘中です。あとは、力仕事ですね。女性スタッフが多いので、畑作業や醸造で重いものを運ぶ時には苦労しています。色々な課題が続出する毎日ですが、多古町産のワインができる日を夢見てみんなで頑張っています。

尾崎由衣さん船越ワイナリーのスタッフさん

ワインを通じて人や世界が繋がる活動をしていきたい

これから、チャレンジしたいことは何ですか?

ワインに繋いでもらったご縁で多古町に辿り着きました。成田空港に近く『世界に近い田舎町でもある多古町』なので、コロナ禍が落ち着いたら国内だけでなく海外にも“船越ワイナリー”のワインを広げていければと考えています。また、ワインがもっと売れ、生産本数が増えていけば、会社の方針でもある『ワインを通じて、農業と地域の活性化』の活動が今よりももっと出来ると思っています。多古町産ワインを作るためのブドウ畑が増え、少しでも耕作放棄地が解消され、ワイン造りに挑む同じ志を持ったそんな仲間が増えたら嬉しいですね。