公開日 2025年09月12日
更新日 2026年03月25日
民法等の一部を改正する法律(父母の離婚後等の子の養育に関する見直し)
父母が離婚した後もこどもの利益を確保することを目的として、令和 6 年 5 月 17 日に民法等の一部を改正する法律が成立されました。
この法律は、こどもを養育する親の責務を明確化するとともに、親権、養育費、親子交流などに関するルールが見直されており、令和 8年 4月1日から施行されます。
親の責務に関するルールの明確化
父母が親権や婚姻関係の有無にかかわらず、こどもを養育する義務を負うことが明確化されています。
こどもの人格の尊重
・父母は親権や婚姻関係の有無にかかわらず、こどもの心身の健全な発達を図るため、こどもを養育する責務を負います。
・こどもが心身ともに健全に成長・生活できるよう、こどもの利益のためにこどもの意見をよく聴き、人格を尊重しなければなりません。
こどもの扶養
父母は親権や婚姻関係の有無にかかわらず、こどもを養う責任があります。この扶養の程度は、こどもが親と同程度の水準を維持することができるようなものでなければなりません。
父母間の人格尊重・協力義務
父母は親権や婚姻関係の有無にかかわらず、こどものために、お互いを尊重し合って協力しなければなりません。
また、次のような行為はこのルールに違反する場合があります。
・暴力や相手を怖がらせたり、相手の心身に悪影響を及ぼすような言動
・他方の親によるこどもの世話を不当に邪魔すること
・理由なくこどもの住む場所を変えること
・約束した親子の交流をさまたげること
※違反した場合、親権者の指定または変更の審判、親権喪失または親権停止の審判等において、その違反の内容が考慮される可能性があります。
※暴力等や虐待から逃げることは、ルールに違反しません。
親権に関するルールの見直し
離婚後の父母双方を親権者と定めることができるようになります。
親権者の定め方
<協議離婚の場合>
父母が、その協議により、親権者を父母双方とするか、その一方とするかを定めます。
<父母の協議が調わない場合や裁判離婚の場合>
家庭裁判所が、父母とこどもとの関係や、父と母との関係などのさまざまな事情を考慮した上で、こどもの利益の観点から、親権者を父母双方とするか、その一方とするかを定めます。この裁判手続きでは、家庭裁判所は、父母それぞれから意見を聴かなければならず、こどもの意思を把握するよう努めなければなりません。
次のような場合には、家庭裁判所は必ず単独親権の定めをすることとされています。
・虐待のおそれがあると認められるとき
・DVのおそれとその他の事情により父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるとき
親権者の変更
離婚後の親権者については、こどもの利益のため必要と認められれば家庭裁判所に変更の請求ができます。
この請求は、こども自身やその家族からでも行うことができます。
共同親権の行使方法
こどもの住む場所や将来の進学先を決めることなど、こどもの生活に大きな影響を与えることは父母双方で決めなければいけません。
【例外】
・父母の一方が親権を行うことができないとき
・日常の行為に当たる行為
【日常の行為に当たる・当たらない例】
|
日常の行為に当たる例 (単独行使可) |
日常の行為に当たらない例 (共同行使) |
|
・食事や服装の決定 ・短期間の観光目的での旅行 ・心身に重大な影響を与えない医療行為の決定 ・通常のワクチン接種 ・習い事 ・高校生の放課後のアルバイトの許可 |
・こどもの転居 ・進路に影響する進学先の決定 ・心身に重大な影響を与える医療行為の決定 ・財産の管理(預金口座の開設など) |
こどもの利益のため緊急の事情があるとき
父母の協議や家庭裁判所の手続きを待っていては親権の行使が間に合わず、こどもの利益を害するおそれがある場合は、日常の行為に当たらないものについても父母の一方で親権を行使することができます。
具体的には、次のような場合です。
・虐待やDVから避難するため、父母のどちらかやこどもが転居する必要がある場合(被害直後に限りません)
・こどもに緊急の医療行為を受けさせる必要がある場合
・入学試験の結果発表後に入学手続きの期限が迫っているような場合
など
養育費の支払い確保に向けた見直し
子どもの生活を守るために、養育費を確実にしっかりと受け取れるように、新たなルールの創設やルールの見直しが行われました。
※施行後(令和8年4月1日以降)に発生するものが対象です。
取り決めの実効性アップ
文書で養育費の取り決めをしていれば、支払いが滞った場合にその文書をもって、一方の親の財産を差し押さえるための申立てができるようになります。
法定養育費とは
離婚後に養育費の取り決めがなくても、子どもと暮らす親が、子どもと暮らしていない親へ、子どもの養育費を請求できる制度となります。
その額は、子ども一人当たり月額2万円となります。
離婚後も子どもの生活が守られるよう設けられました。養育費が決まるまでの暫定的、補充的なものです。
※法定養育費は、父母間で取り決めるべき養育費の標準額や下限額を定める趣旨のものでありません。施行後(令和8年4月1日以降)に離婚した場合が対象です。
裁判手続きがスムーズに
家庭裁判所は、養育費に関する裁判手続きをスムーズに進めるために、収入情報の開示を命じることができることとしています。
また、養育費を請求する民事執行の手続きでは、地方裁判所に対する1回の申立てで財産の開示、給与情報の提供、判明した給与の差し押さえに関する手続きをおこなうことができるようになります。
安全・安心な親子交流の実現に向けた見直し
子どものことを最優先に、親子交流や父母以外の親族との交流に関するルールが見直されました。
親子交流の試行的実施
家庭裁判所の手続き中に親子交流を試行的に行うことができます。家庭裁判所は、子どものためを最優先に考え、実施が適切かどうかや調査が必要かなどを検討し実施を促します。
婚姻中別居の親子交流
父母が婚姻中に子どもと別居している場合の親子交流は、子どものことを最優先に考えることを前提に、父母の協議で決め、決まらない時は家庭裁判所の審判などで決めることがルールとなります。
父母以外の親族と子どもの交流
祖父母など、子どもとの間に親子関係のような親しい関係があり、子どものために必要があるといった場合、家庭裁判所は、子どもが父母以外の親族との交流を行えるようにできます。
財産分与に関するルールの見直し
財産分与の請求期間
財産分与は、夫婦が婚姻中に共に築いた財産を、離婚の際にそれぞれ分け合う制度です。
財産分与は、まずは夫婦の協議によって決めますが、協議が成立しない場合は、家庭裁判所に対して財産分与の請求をすることができます。
今回の改正により、財産分与の請求をすることができる期間が、離婚後2年から、離婚後5年を経過するまでとなりました。
財産分与の考慮要素
これまでは、財産分与に当たってどのような事情を考慮すべきかが明確に規定されいませんでした。
今回の改正では、財産分与の目的が各自の財産上のつり合いがとれるようにすることを明らかにした上で、以下の考慮要素を例にあげています。
・婚姻中に取得または維持した財産の額
・財産の取得または維持についての各自の寄与の程度
・婚姻の期間
・婚姻中の生活水準
・婚姻中の協力及び扶助の状況
・各自の年齢、心身の状況、職業、収入
裁判手続きの利便性の向上
財産分与に関する裁判手続きでは、分与の対象となる財産の種類や金額を明らかにする必要があります。
今回の改正では、手続きをスムーズに進めるために家庭裁判所が当事者に対して財産情報の開示を命じることができることとしています。
